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嘘みたいなトンボの話

成功体験をかっこよく語るブログは数多くあれど、
失敗談を共有することにも価値があるのではないかと思っています。
とはいえ、気楽にご覧ください。

この言葉、知ってる?

ある業界には当たり前のようになっている用語でも、少し業界外へ出るとそれは全く意味が伝わらない言葉になってしまいます。

言葉の意味のみであれば、「なんだ、そうだったのか!」で済むのですが、
問題はそれにより双方の意図が伝わらないまま、行動として不利益を与えてしまうことが出てきてしまうことだと思います。

今回はそんな失敗談です。

さて、「トンボ」といったら?

何を思い浮かべますか?

虫はもちろんのことですが、野球部出身の方は「グラウンド整備に使った」と言うかもしれないし、
クレープ屋さんで働いている人は「生地を広げるあのタケコプターみたいな器具」を想像するかも知れないですね。

ちなみに調べると「効率のよいトンボのかけ方」なんて論文も存在します。奥が深い。

デザイン・印刷業界でのトンボ

デザインや印刷の業界にもトンボが存在します。
トリムマーク(trim mark)とも呼ばれたりしますが、トンボと呼ぶ人が8割くらいなのではないかという体感です。

これらのトンボに共通していることは、虫のトンボに形が似ているということくらいで、意味合いや使い方は業界によって様々ですよね。

 

このトンボ、印刷業界ではいくつかの意味を持ちます。

  1. 仕上がりサイズに断裁するときの目印
  2. 多色刷りのとき、各版の位置をぴったり重ね合わせるための目印

印刷物が仮にA4だとしたら、A4サイズピッタリにデータを作成するのではなく、天地左右に3mmほどの塗り足しエリア(黄色の部分)を設けるのが制作方法としては一般的です。この塗り足しエリアを「裁ち落とし」とか「ドブ」とか言ったりもします。道の両側にある側溝のイメージなんでしょうかね。印刷後、トンボの内寸(水色のライン)に合わせて、断裁することで、縁に変な白場などのない綺麗な印刷物として仕上がります。

二つ折の印刷物仕上がりを指定する場合、十字になっているセンタートンボの横線をカットし、折りトンボとして表記することもあります。

装丁などで本の束(つか)を表記するときは折りトンボをこのように指定します。
束の幅は使用する紙の厚さやページ数を加味して、印刷会社さんと決めることが多いです。

お客様と印刷データのやりとりをすることも多いのですが、
「PDFをそのままプリンタ出力して使いたい」という希望をされる方も最近は多くなりました。

ここで注意しないといけないのですが…

印刷会社に送るのと同じようにトンボ付き印刷品質PDFを渡した場合、
上記のトンボの意味をお客様が知らない、または説明しないと…
トンボも印刷物の一部と判断され、そのまま並べられたり掲示されたりしてしまうことがあります。

これは実際に、ある旅館・ホテルまたウェディング会場でも、トンボ付の状態で印刷物がメニューとして配布されたり、
ドリンクサーバーの横にラミネートされて掲示されたという実体験があります。

はじめからそういった用途が想定される場合は、

  1. トンボなし原寸のデータを作成して、お客様にご説明する
  2. 制作時にも外側からの余白は多めにとってデザインする

等々、色々と工夫をしてあげると良いと思います。
プリンタ出力だと天地左右に白の余白が強制的に出てしまう場合もあり、大事な内容が欠けてしまうことを防ぐためです。

同じ業界の人であれば「まさか」と思うことが、記号の意味が通じないことで「起こりうる」ので
トンボに限らず、気をつけていきたいですね。

余談ですが、トンボに似せたマークをデザインとして枠に配置したことから
あとで「どっちがトンボ?」という問い合わせがきたケースもあります。その節は申し訳ありませんでした(平謝り)

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